日本の法令における
歯科矯正医療 「不正咬合」 の客観的位置
もくじ:
― 日本国憲法
歯科医師法
歯科医師法施行令
歯科医師法施行規則
― 総務省
統計法第2条第9項に規定する統計基準,傷病および死因に関する分類(WHO国際疾病分類 ICD)
― 文部科学省
就学時健康診断票
児童, 生徒, 学生, 幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項
及び健康診断票の様式例の取扱いについて
― 厚生労働省
健康増進法(平成十四年法律第百三号)第九条第一項に規定する健康診査等指針
― WHO:ユニバーサル・ヘルス・カレッジ
子どもの権利条約(政府訳,日本ユニセフ訳)
- 子ども家庭庁
成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律
母子保健法(妊産婦,乳児,幼児)
成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(成育医療等基本方針)
周産期
乳幼児期
学童期・思春期
全成育期
法令上,歯の位置や顎骨の大きさの異常(不正咬合,歯列・咬合の異常) は,疾病・傷病 として規定(統計法,ICD 国際疾病分類)されています.現在のわが国において,歯科矯正医療の公的医療保障の適用範囲は,以下の疾患に起因した咬合異常,別の言い方で定義すれば,外科的介入の必要な患者に限られています.
厚生労働大臣が定める施設基準に適合し届け出た保険医療機関において行う厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常、3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。
厚生労働大臣が定める施設基準に適合し届け出た保険医療機関において行う顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)の手術の前後における療養
厚生労働省では,「歯科矯正につきましては、疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象といたしております。これは、我が国の公的医療保険は疾病や負傷の治療等に対して保険給付することを目的としておりますけれども、歯科矯正治療につきましては審美的な要素も大きいため、原則的に保険適用外となっているためでございます。(中略)この歯科矯正治療の範囲につきましては、今後とも、関係学会の御提案を踏まえ、中医協におきまして御議論いただき、必要に応じ、見直しについて適切に取り組んでまいりたいと考えております。(第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 令和4年4月7日)」 との答弁がなされています.
ここでは美容的要素とは何か.またその要素の大きさがどのくらい大きくなると疾病でなくなるのか,についての議論はいたしませんが,すでに国際的な基準が確立されています.また健康概念の社会的変化によって,乳房再建や不妊治療,あるいは肥満や禁煙指導など,健康に影響を与える「病い」への公的医療保障が適用となっているように,また諸外国における現状を挙げるまでもなく,わが国にたまたま生まれた児童生徒にとって,本人の責任に帰することのできない状況(子どもの権利条約)によって,学校や社会での生活における参加制約や活動制限に影響する口腔の状態を維持改善するために,歯科矯正医療へのアクセスが経済的理由によって制限されているわが国の国民の状況はどうすればよいでしょうか.
わが国の歯科界では,こうした社会疫学的見地からの現状把握が大変遅れています.グローバルヘルスの原則として,国家の健康指標は中低所得層の国民に視点を置くことで初めて改善がなされます.口腔の健康と所得格差の問題は徐々に認識されつつありますが,わが国で長年継続している8020運動について,政府は令和4年度(2022)の歯科疾患実態調査において,国民の過半数が8020を達成したと報告しているのですが,80才以上の被験者は287人でその達成者は42%(123/287)に,75才以上の被験者を加え平均80才として推計したものでした.また令和元年(2019)の国民健康・栄養調査においても,国民の歯の本数調査がなされ8020達成者は31.8%でした.平成30年(2018)の国民健康・栄養調査では,はじめて被験者の経済状況(世帯年間収入別)による歯の本数調査なされ,世帯年収が高くなるほど男女ともに歯の本数が20本未満である者の割合が少なくなっていたことが明らかになりました.すなわち,国民の経済状況によって受けられる歯科医療に明らかな格差(歯科医療の健康格差)が存在していることが明示されています.
グローバルヘルス,国民の健康に対し,国家のなすべき規範として,すべての国民に公平に負担可能な費用で医療サービスを提供すること,過大な医療負担によって経済的破城に陥ることのないように国民を保護すること,常に視点を低・中所得層の人々におくことで国家の健康指標は改善がなされる.という規範,医療倫理の問題解決の視点があります.我が国では未だ十分に正確な調査がおこなわれていないのが現状です.☛ わが国における歯科矯正医療の経験者は,6%程度(歯科疾患実態調査)であることが報告されていますが,多くの文化的な西洋諸国では,歯の位置異常や顎の大きさの異常(ICD K07)は,古くから公衆衛生上の問題として,また児童生徒の健やかな発育に影響する医学的に必要な健康上の問題として,児童生徒の自尊心・社会参加への制約や活動制限といった日常生活における障害という視座から,社会に受容され,公的医療保障の対象となってきました.歯科矯正医療は,他の歯科分野とは明らかに異なり,代替療法がなく,患者は治療するか・しないか,どちらかの選択しかできません.経済的理由によって治療を開始することが困難な国民からの要望は多く,各自治体からの意見書,請願やそれによる政府答弁もここ数年続いています.
こうした社会背景(国民や自治体の要望)と経過を経て,2024年6月より 「歯科矯正相談料」 の保険給付が適用開始されました.これは,子どもの歯科矯正に関する担当省が,学校歯科健診の文部科学省(学校歯科医会)から,厚生労働省(矯正歯科学会)へと移ったことを意味しており,より具体的な議論へと進展するでしょう.世界歯科連盟(FDI)では,子どもの健やかな口腔の健康のために歯科矯正医療への公的資金援助を各国が行うよう政策指針を公表しています.なぜわが国の国民(児童・生徒)は,必要な時に負担可能な費用で歯科矯正医療の恩恵を受けることができず,歯科矯正学の研究結果(技術や知識)は公平に分配されていないのでしょうか? 矯正歯科医療従事者の解決すべき最重要課題です.
☛ 日本の歯科矯正に関する公的医療保障(法令,政策形成)の流れ
1947:高橋新次郎:原文のまま 不正咬合並びにこれに依りて招来される顎骨の異常,乃至は顔貌の不正(勿論顎骨の異常が原因で不正咬合を生ずることも多いが)等は單に患者の咀嚼,發音等の諸機能を阻害するにのみならず,患者自身の精神上にも頗る重大な影響を及ぼし,これがため自らを卑下し,社會生存上常に大なる損失を招きつゝあることは吾々經驗するところである。例へば圖1-2のやうな甚だしい不正咬合に於いては,その顔貌上に及す影響も極めて大であつて患者自らもその點に關し,懊惱苦悶せることは明らかである。かくの如き場合に於ける矯正施術の目的は,單に齒牙の正常なる機能を恢復するばかりでなく,進んで顔面の不正おも改善することにより,より重大な意義を有することは明である。顔貌の不正は患者自身の精神上にも架る.
2016: FDI 世界歯科連盟による口腔保健の新しい定義 口腔の健康は,多面的な概念であり,痛み,不快感,頭蓋顎顔面複合体の疾患がなく,自信を持って話し,微笑み,嗅覚,味覚,触覚,咀嚼,嚥下,そして表情を通して様々な感情を伝える能力を含む.口腔の健康は,生活の質を高めるために不可欠な生理的,社会的,心理的特性を反映するものである(FDI World Dental Federation. FDI Definition of Oral Health, 2016)☛ 口腔保健のビジョンは,技術的な方向性から患者の心理社会的なwell-beingにも注意を払う広範な視点へと発展しており,文化的な西洋諸国の歯科矯正医たちは,自分たちの立場や知名度をこのような発展に合わせていくべきだと気づき,より患者中心の方法で協力し,より広い分野と交流する学問分野へと変化しているが,わが国ではこうした認識はまだ見られない.
2019: FDI 世界歯科連盟 歯列不正への施政方針 7. Public or private oral health insurance policies and third-party payers should acknowledge the need for and contribute financially to orthodontic treatment that is necessary in line with the FDI definition of oral health. 7. 公的あるいは民間の口腔の健康保険制度および第三者保険支払い者は,FDIの口腔の健康の新しい定義に沿って,必要な歯科矯正治療を認識し,財政的援助を拠出すべきである。(FDI World Dental Federation. Malocclusion in Orthodontics and Oral Health. ADOPTED by FDI General Assembly September, 2019 in San Francisco, United States of America)
2022: 政府参考人(厚生労働省) お答えいたします。 歯科矯正につきましては、疾患と咬合異常や歯列不正との関係が明らかな場合に保険給付の対象といたしております。これは、我が国の公的医療保険は疾病や負傷の治療等に対して保険給付することを目的としておりますけれども、歯科矯正治療につきましては審美的な要素も大きいため、原則的に保険適用外となっているためでございます。令和四年の診療報酬改定におきましては、保険適用される歯科矯正の範囲について見直しを行いました。疾患に起因する咬合異常につきまして、これまでの五十九疾患に二疾患を追加いたしました。また、永久歯萌出不全、これは永久歯が生えてこない状態についてでございますけれども、前歯三歯以上から前歯及び小臼歯の三歯以上への拡大を行ったところでございます。この歯科矯正治療の範囲につきましては、今後とも、関係学会の御提案を踏まえ、中医協におきまして御議論いただき、必要に応じ、見直しについて適切に取り組んでまいりたいと考えております。(第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 令和4年4月7日)
社会課題としての認識:正しい情報や知識をえることは重要です.Web上において,「間違った海外の矯正歯科事情」,「何十年も前の医療制度」,「外国をひとくくりにした誤認」など,不正確な歯科矯正の神話や言い伝えが発信されています.矯正歯科医療従事者も,現在のわが国の歯科矯正の社会的次元は,医療の社会的受容という側面では大変遅れた国家であり,われわれの技術も知識も浸透していないことを自覚する必要があります.先行する西洋諸国での社会的受容や政策の様相を知ることは,わが国の立ち遅れている歯科矯正医療の社会への適用によって児童生徒の健康や生活の向上がなされるために大変参考になります.
歯科医師の卒前卒後の教育として,技術的次元だけではなく,実践的道徳的次元として,また国民の生活の向上,公衆衛生上の見地からの歯科矯正医療のあり方を考え,公平な歯科矯正医療の供給体制(医療資源の配分)についての疑問を考えるために,現在の法令上における客観的事実と諸外国の現状について記載しています.
こども大綱 注:子ども家庭庁において気になること.
大臣答弁やこども大綱において,「子ども」,「若者」,「大人」 の三つを使い分けた発言や記述がなされているのであるが,こども基本法では,『 「こども」とは,心身の発達の過程にある者』 と定義している.⇒ 別記参照. 我が国においては,「子ども」の定義がはっきりしておらず,法令によって定義が異なっている.英語ではChildであるが,これを,児童(外務省),子ども(厚生労働省),こども(こども家庭庁)と翻訳も関係省庁によってさまざまである.国民の認識においても,子ども と言えば,小学生以下を思うことが多いだろう.こうした認識は西洋諸国の政策との比較において障害となることもある.
たとえば,「子どもの歯科矯正」という場合,大人ではない者すべてを言い,18才以下の高校生までを指すのであるが,こども家庭庁の政策で
は,乳児,幼児といった就学前の国民への政策が主となっていることが気になるのである.
また,「こども大綱」には以下の記述.「こども基本法において「こども」とは「心身の発達の過程にある者をいう。」とされている。これは、18歳や20歳といった年齢で必要なサポートが途切れないよう、こどもや若者がそれぞれの状況に応じて社会で幸せに暮らしていけるように支えていくことを示したものであり、こどもが、若者となり、おとなとして円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程にある者を指している3。
この大綱から思うには,こども家庭庁における「こども」とは,年齢での区切りではないのではっきりしない.大人であっても心身の発達過程にある者は「若者」としてこども家庭庁の範疇に入っており,心身の発達過程にあるものとは,「こども・若者」 と述べている部分も多くあり,最初の こども の定義とも混乱している.「若者」 という言葉は削除したほうがよいのではないでしょうか?
K07 - 歯顎顔面(先天)異常[不正咬合を含む]
K07.0 - 顎の大きさの著しい異常
K07.1 - 顎と頭蓋底との関係の異常
K07.2 - 上下歯列弓の位置的関係の異常
K07.3 - 歯の位置異常
K07.4 - 不正咬合,詳細不明
K07.5 - 歯顎顔面の機能的異常
K07.6 - 顎関節障害
K07.8 - その他の歯顎顔面の異常
K07.9 - 歯顎顔面の異常,詳細不明
1900年 (明治33) | ICD | 国際疾病分類 | ICDは1900年(明治33年)に国際会議で初めて採択.当初は死亡統計の分類として使用されていたが,疾病統計等へ視野拡大し改訂を重ね,我が国でも1900年からICDを採用.現在では,ICD-10(2013年版)に準拠した「疾病,傷害及び死因の統計分類」を作成し,統計法に基づく統計基準として告示改正を行い,2016年より人口動態統計や患者調査等の公的統計に使用しているほか,医療機関における診療録の管理等に活用されている. | |
1980年 | ICIDH | 国際障害分類 | 1970年代より、世界保健機関(以下「WHO」という。)において障害に関する分類法について検討が始まり、1980年に国際疾病分類(以下「ICD」という。)の第9回改訂に際して、補助分類として、機能障害と社会的不利に関する分類であるWHO国際障害分類(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:以下「ICIDH」という。)が発表された | |
2001年 | ICF | 国際生活機能分類 | その後、単に心身機能の障害による生活機能の障害を分類するという考え方でなく、生活機能という人間を総合的に捉えた観点からの分類として、活動や社会参加、特に環境因子というところに大きく光を当て、その概念の拡充及び質的変容が図られた国際生活機能分類(以下「ICF」という。)が、ICIDHの改訂版として、2001年5月、ジュネーブで開かれた第54回WHO総会において採択がなされた。ICFは、これまでのICDの補助分類からICDと並ぶ中心分類の一つとなった。 | |
日本国憲法 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
わが国の社会保障の始まりは,明治期の廃藩置県,地租改正などによる貧困問題への公的な救済法として明治7年(874に発布された 恤救(じゅっきゅう)規則 にあり,昭和4年(1929)救護法,昭和25年(1950)生活保護法へ引き継がれている.
社会保障概念の基は 日本国憲法第25条 であり,その概念を明示したものが 「社会保障制度に関する勧告(社会保障制度審議会 1950年)」 とされる.1942年の Sir William Beveridge 卿による 「SOCIAL INSURANCE AND ALLIED SERVICE 通称 ベバリジ報告」,同年の ILO 国際労働機関による 「社会保障への途」 に基づいて提唱されたのが,以下の社会保障制度に関する勧告(社会保障制度審議会 1950年)
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
いわゆる社会保障制度とは,疾病,負傷,分娩,廃疾,死亡,老齢,失業,多子その他困窮の原因に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに,公衆衛生及び社会福祉の向上を図り,もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。社会保障制度に関する勧告(社会保障制度審議会 1950年)
☛ 後記するように,疾病や傷病に対してのみ保険給付されるわけではなく,政府答弁も正解とは言えないであろう.不妊治療,乳がん摘出後の乳房再建など,健康概念の変化,国民の声,諸外国の現状を理解することが大切である.歯科矯正はどうか?
すなわち,社会保障制度とは,
① リスク分散:自分の責任に帰することのできない理由によって発生する,さまざまな経済的リスクに対して社会全体で備えること
② リスク軽減:そうしたリスクが実際に発生する可能性そのものを社会全体で引き下げること
という2つの側面から,最低限度の生活「ナショナル・ミニマム」を保障する.
Webにおいて検索すると,自称:矯正歯科専門医のページには,さまざまな稚拙な解説が記載されている.保険適用とならない理由として,大きく分けると,① そうきまっているから.② 歯並びは病気ではないから.という
①については社会課題としての認識と医療提供者としての自覚の不足,②については,わが国の法令ではICDの採用により不正咬合は昭和43年以降,統計法によっても疾病と規程されていることから,いずれも正しい教育を要する.釈迦に説法ではあるが,健康とは何か? 病気(疾病,傷病)ではないということはどういうことか? 今一度,医療とは,健康とは何かを考えてほしい.
残念な例:
歯科矯正は,審美だから保険がきかないのです.
歯科矯正は,見た目を直すので病気じゃないのです.
歯科矯正は,自由診療と決まっていのです.
出典:歯科矯正学実習書 実習総論 p.1 医歯薬出版 昭和53 1978
技術を中心とした治療学の進歩は,不正咬合の治療効果を高め,治療に伴う歯根吸収などの障害を避け,術後の安定を一層確実にするための努力の表現であって,このこと自体,非難されるべきではない.しかし,一方では,技術的進歩のみが独走して,そのあとにかずかずの矛盾が残されたという面がないとはいえない.とくに,歯科矯正学の学問体系に関する総論的な考察が遅れ,矯正治療の意義と目的とは,ともすれば不明瞭となり,このため歯科矯正学は,学生諸君からも,そしてときには矯正専門医からも,あたかも美容整形技術の一部であるかのように受け取られる結果を招いている.歯科矯正学は,現在,もう一度そのあり方について考える時期に来ているといえる.そして,学問の進歩とともに,また時代の流れと社会の変化とともに,常に考え続けるものでなければならない.
わかりやすい医療の基礎
第1節 社会保障の誕生
第2節 社会保障の発展
第3節 社会保障の「見直し」と再認識
第4節 日本の社会保障はどうだったのか
第1節 自立と連帯 ~ 自立した個人を,連帯して支える
第2節 効率と公正 ~ 効率と公正の同時実現を追求する時代に
第7章 社会保障を考えるにあたっての視点(p.218-244)
第1節 望ましい社会の姿を考える
第2節 社会保障の機能・役割を理解する
第3節 社会保障の給付と負担の関係を考える
第4節 他社の立場で考える
「社会保障って,なに? ~身近な人から学ぶ健康保険や公的年金の話~ 」 厚生労働省 映像教材 25分30秒
【高校生のための政治経済】 社会保険③雇用保険・労災保険・介護保険#4
【高校生のための政治経済】 公的扶助・社会福祉・公衆衛生#5
医療法
第一章 総則
第一条 この法律は、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
第一条の二 医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。
2 医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等(居宅その他厚生労働省令で定める場所をいう。以下同じ。)において、医療提供施設の機能に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。
第一条の四 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第一条の二に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。
2 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。
歯科医師法
第一章 総則
第一条 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
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統計法
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項に規定する機関又は国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関をいう。
9 この法律において「統計基準」とは、公的統計の作成に際し、その統一性又は総合性を確保するための技術的な基準をいう。
(統計基準の設定)
第二十八条 総務大臣は、政令で定めるところにより、統計基準を定めなければならない。
2 総務大臣は、前項の統計基準を定めようとするときは、あらかじめ、統計委員会の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
3 総務大臣は、第一項の統計基準を定めたときは、これを公示しなければならない。これを変更し、又は廃止したときも、同様とする。
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平成21年 2009年3月23日付 官報 号外 第57号 16頁
総務省告示 第176号
統計法(平成19年法律第53号。以下「法」という。)第28条第1項及び附則第3条の規定に基づき、法第2条第9項に規定する統計基準として、疾病、傷害及び死因に関する分類を次のように定め、平成21年4月1日から施行し、同日以後に作成する公的統計(法第2条第3項に規定する公的統計をいう。)の表示に適用する。
平成6年総務庁告示第75号は、平成21年3月31日限り廃止する。
平成21年3月23日
総務大臣 鳩山邦夫
1 統計基準の名称疾病、傷害及び死因の統計分類
2 疾病、傷害及び死因の統計分類を設定する目的
公的統計を疾病、傷害及び死因別に表示する場合において、当該公的統計の統一性と総合性を確保し、利用の向上を図ることを目的とする。
3 分類表
(1)疾病、傷害及び死因の統計分類基本分類表
一 疾病、傷害及び死因の統計分類基本分類表
第XI章消化器系の疾患
口腔,唾液腺及び顎の疾患 (K00-K14)
K07歯顎顔面(先天)異常[不正咬合を含む]
K07.0 顎の大きさの著しい異常
K07.1 顎と頭蓋底との関係の異常
K07.2 上下歯列弓の位置的関係の異常
K07.3 歯の位置異常
K07.4 不正咬合,詳細不明
K07.5 歯顎顔面の機能的異常
K07.6 顎関節障害
K07.8 その他の歯顎顔面の異常
K07.9 歯顎顔面の異常,詳細不明
07 歯顎顔面(先天)異常 [不正咬合を含む]
Dentofacial anomalies [including malocclusion]
除外: 顔面半側萎縮又は肥大(Q67.4)
片側性下顎頭過形成又は形成不全(K10.8)
07.0 顎の大きさの著しい異常
過形成, 低形成:
・上顎
・下顎
大顎症(上顎)(下顎)
小顎症(上顎)(下顎)
除外:末端肥大症<先端巨大症>(E22.0)
ロバン<Robin>症候群(Q87.0)
07.1 顎と頭蓋底との関係の異常
顎の非対称
顎前突(症)(上顎)(下顎)
顎後退(症)(上顎)(下顎)
07.2 上下歯列弓の位置的関係の異常
交叉<差>咬合(前歯部)(臼歯部)
遠心咬合
近心咬合
歯列弓の正中偏位
開咬(前歯部)(臼歯部)
(過剰な)オーバーバイト<過蓋咬合>:
・深部
・水平的
・垂直的
オーバージェット
下顎歯の後臼歯部舌側咬合<鉄状咬合>
07.3 歯の位置異常
そう<叢>生
歯隙
転位<displacement>
捻転<回転>
空隙, 異常
移転<位置交換><transposition>
上記のような歯及び隣接歯の異常位を伴う埋伏歯
除外:異常位を伴わない埋伏歯(K01.-)
07.4 不正咬合,詳細不明
07.5 歯顎顔面の機能的異常
閉口異常
下記による不正咬合:
・異常えん<嚥>下
・口呼吸
・舌, 口唇又は指の習癖
除外:歯ぎしり NOS(F45.8)
07.6 顎関節障害
コステン<Costen>徴候又は症候群
顎関節障害<内障>
顎関節の snapping<クリッキング>
顎関節疼痛機能障害症候群
除外:新鮮顎関節脱臼(S03.0)
新鮮顎関節ストレイン(S03.4)
07.8 その他の歯顎顔面の異常
07.9 歯顎顔面の異常,詳細不明
― WHOによる国際疾病分類 ICD Ver: 02/2022― 歯科矯正領域の疾病として
統計法により,国勢統計、国民経済計算その他国の行政機関が作成する統計のうち,総務大臣が指定する特に重要な統計を「基幹統計」として位置付け,この基幹統計を中心として公的統計の体系的整備を図ることとしている.患者調査も基幹統計の一つ.
国勢調査,患者調査などの基幹統計調査は,公的統計の中核となる基幹統計を作成するための特に重要な統計調査であり,正確な統計を作成する必要性が特に高いことなどを踏まえ,一般統計調査にはない特別な規定(下記)が定められている.
報告義務:幹統計調査に対する正確な報告を法的に確保するため、基幹統計調査の報告(回答)を求められた者が、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすることを禁止しており(第13条)、これらに違反した者に対して、50万円以下の罰金が定められています(第61条)。
かたり調査の禁止:被調査者の情報を保護するとともに、公的統計制度に対する信用を確保するため、基幹統計調査について、その調査と紛らわしい表示や説明をして情報を得る行為(いわゆる「かたり調査」)を禁止しており(第17条)、これに違反した者に対して、未遂も含めて2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が定められています(第57条)。
地方公共団体による事務の実施:基幹統計調査は、全数調査や大規模な標本調査として行われることが少なくなく、国の職員だけで、限られた期間内に調査を円滑に終えることは困難です。そこで、調査を円滑かつ効率的に実施するため、調査事務の一部を法定受託事務として、地方公共団体が行うこととすることができるとされています(第16条)。地方公共団体が行う事務の具体的な内容は、個々の基幹統計調査ごとに、政令(国勢調査令、人口動態調査令及び統計法施行令)で定められています。
なお、調査に要する経費は、国が全額支出します(地方財政法第10条の4)。
国際疾病分類の第11回改訂版 (ICD-11)は2018年にリリースされ,ICD-DAと統合され,矯正歯科領域における顎顔面,歯・歯列の異常を疾患分類している.プリント版に加えて,Browseによる検索が容易にデジタル化され,疾病概念を説明するコンテンツも記載されている.疫学,臨床,研究目的で,今後の我が国における歯科矯正の疫学調査に有用と思われる. 2022.1から5年程度の移行期間を経て ICD-11は実施される.社会保障審議会 (統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会) において日本語化など検討中
ICDの概要について: ICD-11の国内の公的統計への適用について Browse Print Versions
☛ 不正咬合は,以下に分類される.
DA0E.5 Malocclusion
All ancestors up to top
- 13 Diseases of the digestive system
- Diseases or disorders of orofacial complex
- DA0E Dentofacial anomalies
- DA0E.5 Malocclusion
Description:
WHO_EN: Malocclusion is the atypical relationship between maxillary and mandibular teeth which may interfere with the efficiency of excursive movements of the mandible that are essential for the effective mastication process.
不正咬合とは,効果的な咀嚼に欠かせない下顎骨の左右・前後の滑走運動効率に影響を与えるような,上下顎の歯の非典型的な位置関係をいう.
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - (文部科学省)
学校保健安全法
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校における安全管理に関し必要な事項を定め、もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。
2 この法律において「児童生徒等」とは、学校に在学する幼児、児童、生徒又は学生をいう。
(児童生徒等の健康診断)
第十三条 学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く。)の健康診断を行わなければならない。
2 学校においては、必要があるときは、臨時に、児童生徒等の健康診断を行うものとする。
第十四条 学校においては、前条の健康診断の結果に基づき、疾病の予防処置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない。
(健康診断の方法及び技術的基準等)
第十七条 健康診断の方法及び技術的基準については、文部科学省令で定める。 ☛ 次項以降に記載
2 第十一条から前条までに定めるもののほか、健康診断の時期及び検査の項目その他健康診断に関し必要な事項は、前項に規定するものを除き、第十一条の健康診断に関するものについては政令で、第十三条及び第十五条の健康診断に関するものについては文部科学省令で定める。
3 前二項の文部科学省令は、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第九条第一項に規定する健康診査等指針と調和が保たれたものでなければならない。
(学校医、学校歯科医及び学校薬剤師)
第二十三条 学校には、学校医を置くものとする。
2 大学以外の学校には、学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする。
☛ 児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項及び健康診断票の様式例の取扱いについて
☛ 健康増進法(平成十四年法律第百三号)第九条第一項に規定する健康診査等指針
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学校保健安全法施行令
内閣は、学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)第十条第二項、第十二条、第十七条、第十八条第三項及び第二十条の規定に基き、この政令を制定する。
(就学時の健康診断の時期)
第一条 学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号。以下「法」という。)第十一条の健康診断(以下「就学時の健康診断」という。)は、学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)第二条の規定により学齢簿が作成された後翌学年の初めから四月前(同令第五条、第七条、第十一条、第十四条、第十五条及び第十八条の二に規定する就学に関する手続の実施に支障がない場合にあつては、三月前)までの間に行うものとする。
2 前項の規定にかかわらず、市町村の教育委員会は、同項の規定により定めた就学時の健康診断の実施日の翌日以後に当該市町村の教育委員会が作成した学齢簿に新たに就学予定者(学校教育法施行令第五条第一項に規定する就学予定者をいう。以下この項において同じ。)が記載された場合において、当該就学予定者が他の市町村の教育委員会が行う就学時の健康診断を受けていないときは、当該就学予定者について、速やかに就学時の健康診断を行うものとする。
(検査の項目)
第二条 就学時の健康診断における検査の項目は、次のとおりとする。
一 栄養状態
二 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無
三 視力及び聴力
四 眼の疾病及び異常の有無
五 耳鼻咽頭疾患及び皮膚疾患の有無
六 歯及び口腔の疾病及び異常の有無
七 その他の疾病及び異常の有無
(感染性又は学習に支障を生ずるおそれのある疾病)
第八条 法第二十四条の政令で定める疾病は、次に掲げるものとする。
一 トラコーマ及び結膜炎
二 白癬(せん)、疥癬(かいせん)及び膿痂疹(のうかしん)
三 中耳炎
四 慢性副鼻腔炎及びアデノイド
五 齲歯
六 寄生虫病(虫卵保有を含む。)
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学校保健安全法施行規則
第二章 健康診断
第一節 就学時の健康診断
(方法及び技術的基準)
第三条 法第十一条の健康診断の方法及び技術的基準は、次の各号に掲げる検査の項目につき、当該各号に定めるとおりとする。
一 栄養状態は、皮膚の色沢、皮下脂肪の充実、筋骨の発達、貧血の有無等について検査し、栄養不良又は肥満傾向で特に注意 を要する者の発見につとめる。
二 脊柱の疾病及び異常の有無は、形態等について検査し、側わん症等に注意する。
三 胸郭の異常の有無は、形態及び発育について検査する。
四 視力は、国際標準に準拠した視力表を用いて左右各別に裸眼視力を検査し、眼鏡を使用している者については、当該眼鏡を使用している場合の矯正視力についても検査する。
五 聴力は、オージオメータを用いて検査し、左右各別に聴力障害の有無を明らかにする。
六 眼の疾病及び異常の有無は、感染性眼疾患その他の外眼部疾患及び眼位の異常等に注意する。
七 耳鼻咽いん頭疾患の有無は、耳疾患、鼻・副鼻腔くう疾患、口腔咽喉頭疾患及び音声言語異常等に注意する。
八 皮膚疾患の有無は、感染性皮膚疾患、アレルギー疾患等による皮膚の状態に注意する。
九 歯及び口腔の疾病及び異常の有無は、齲歯、歯周疾患、不正咬合その他の疾病及び異常について検査する。
十 その他の疾病及び異常の有無は、知能及び呼吸器、循環器、消化器、神経系等について検査するものとし、知能については適切な検査によつて知的障害の発見につとめ、呼吸器、循環器、消化器、神経系等については臨床医学的検査その他の検査によつて結核疾患、心臓疾患、腎臓疾患、ヘルニア、言語障害、精神神経症その他の精神障害、骨、関節の異常及び四肢運動障害等の発見につとめる。
第二節 児童生徒等の健康診断
(時期)
第五条 法第十三条第一項の健康診断は、毎学年、六月三十日までに行うものとする。ただし、疾病その他やむを得ない事由によつて当該期日に健康診断を受けることのできなかつた者に対しては、その事由のなくなつた後すみやかに健康診断を行うものとする。
2 第一項の健康診断における結核の有無の検査において結核発病のおそれがあると診断された者(第六条第三項第四号に該当する者に限る。)については、おおむね六か月の後に再度結核の有無の検査を行うものとする。
(検査の項目)
第六条 法第十三条第一項の健康診断における検査の項目は、次のとおりとする。
七 歯及び口腔の疾病及び異常の有無
(方法及び技術的基準)
第七条 法第十三条第一項の健康診断の方法及び技術的基準については、次項から第九項までに定めるもののほか、第三条の規定(同条第十号中知能に関する部分を除く。)を準用する。この場合において、同条第四号中「検査する。」とあるのは「検査する。ただし、眼鏡を使用している者の裸眼視力の検査はこれを除くことができる。」と読み替えるものとする。
8 身体計測、視力及び聴力の検査、問診、胸部エツクス線検査、尿の検査その他の予診的事項に属する検査は、学校医又は学校歯科医による診断の前に実施するものとし、学校医又は学校歯科医は、それらの検査の結果及び第十一条の保健調査を活用して診断に当たるものとする。
(事後措置)
第九条 学校においては、法第十三条第一項の健康診断を行つたときは、二十一日以内にその結果を幼児、児童又は生徒にあつては当該幼児、児童又は生徒及びその保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいう。)に、学生にあつては当該学生に通知するとともに、次の各号に定める基準により、法第十四条の措置をとらなければならない。
一 疾病の予防処置を行うこと。
二 必要な医療を受けるよう指示すること。
三 必要な検査、予防接種等を受けるよう指示すること。
四 療養のため必要な期間学校において学習しないよう指導すること。
五 特別支援学級への編入について指導及び助言を行うこと。
六 学習又は運動・作業の軽減、停止、変更等を行うこと。
七 修学旅行、対外運動競技等への参加を制限すること。
八 机又は腰掛の調整、座席の変更及び学級の編制の適正を図ること。
九 その他発育、健康状態等に応じて適当な保健指導を行うこと。
2 前項の場合において、結核の有無の検査の結果に基づく措置については、当該健康診断に当たつた学校医その他の医師が別表第一に定める生活規正の面及び医療の面の区分を組み合わせて決定する指導区分に基づいて、とるものとする。
第三節 健康診断
(就学時の健康診断)
第十一条 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法第十七条第一項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当たつて、その健康診断を行わなければならない。
第十二条 市町村の教育委員会は、前条の健康診断の結果に基づき、治療を勧告し、保健上必要な助言を行い、及び学校教育法第十七条第一項に規定する義務の猶予若しくは免除又は特別支援学校への就学に関し指導を行う等適切な措置をとらなければならない。
第四章 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の職務執行の準則
(学校歯科医の職務執行の準則)
第二十三条 学校歯科医の職務執行の準則は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること。
二 法第八条の健康相談に従事すること。
三 法第九条の保健指導に従事すること。
四 法第十三条の健康診断のうち歯の検査に従事すること。
五 法第十四条の疾病の予防処置のうち齲歯その他の歯疾の予防処置に従事すること。
六 市町村の教育委員会の求めにより、法第十一条の健康診断のうち歯の検査に従事すること。
七 前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する指導に従事すること。
2 学校歯科医は、前項の職務に従事したときは、その状況の概要を学校歯科医執務記録簿に記入して校長に提出するものとする。
附 則 (令和五年四月二八日文部科学省令第二二号)
この省令は、令和五年五月八日から施行する。
別表第一
区分 | 内容 | |
生活規正の面 | A(要休業) | 授業を休む必要のあるもの |
B(要軽業) | 授業に制限を加える必要のあるもの | |
C(要注意) | 授業をほぼ平常に行つてよいもの | |
D(健康) | 全く平常の生活でよいもの | |
医療の面 | 1(要医療) | 医師による直接の医療行為を必要とするもの |
2(要観察) | 医師による直接の医療行為を必要としないが、定期的に医師の観察指導を必要とするもの | |
3(健康) | 医師による直接、間接の医療行為を全く必要としないもの |
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学校保健安全法第13条第1項,同 施行規則第3条第9項,文部科学省令にて規定された技術的基準として,日本学校歯科医会の定める「歯列・咬合の判定基準0,1,2」
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文部科学省令
事 務 連 絡
(2015)平成27年9月11日
文部科学省スポーツ・青少年局 学校健康教育保健指導係
児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の
補足的事項及び健康診断票の様式例の取扱いについて
各欄の記入については、次によること。
1 「歯列・咬合」の欄 歯列の状態、咬合の状態について、異常なし、定期的観察が必要、専門医(歯科医師)による診断が必要、の3区分について、それぞれ0、1、2で記入する。
2 「顎関節」の欄顎関節の状態について、異常なし、定期的観察が必要、専門医(歯科医師)による診断が必要、の3区分について、それぞれ0、1、2で記入する。
3 「歯垢の状態」の欄 歯垢の付着状態について、ほとんど付着なし、若干の付着あり、相当の付着あり、の3区分についてそれぞれ0,1,2で記入する。
4 「歯肉の状態」の欄 歯肉炎の発症は歯垢の付着とも関連深いものであるが、ここでは歯肉の増殖や退縮などの歯肉症状からみて、異常なし、定期的観察が必要、専門医(歯科医師)による診断が必要、の3区分について、それぞれ0、1、2で記入する。
5 「歯式」の欄 次による。
イ 現在歯、う歯、喪失歯、要注意乳歯及び要観察歯は、記号を用いて、歯式の該当歯の該当記号を附する。
ロ 現在歯は乳歯、永久歯とも該当歯を斜線又は連続横線で消す。
ハ 喪失歯はう歯が原因で喪失した永久歯のみとする。該当歯に△を記入する。
ニ 要注意乳歯は、保存の適否を慎重に考慮する必要があると認められた乳歯とする。該当歯に×を記入する。
ホ う歯は、乳歯、永久歯ともに処置歯○又は未処置歯Cに区分する。
ヘ 処置歯は、充填、補綴により歯の機能を営むことができると認められる歯で該当歯に○を記入する。ただし、う歯の治療中のもの及び処置がしてあるがう歯の再発等により処置を要するものは未処置歯とする。
ト 永久歯の未処置歯Cは、直ちに処置を必要とするものとする。
チ 要観察歯は主として視診にて明らかなう窩が確認できないが、う歯の初期病変の徴候(白濁、白斑、褐色斑)が認められ、その経過を注意深く観察する必要がある歯で該当歯にCOと記入する。具体的には、(1)小窩裂か溝では、エナメル質の実質欠損は認められないが、う蝕の初期病変を疑うような褐色、黒色などの着色や白濁が認められるもの、(2)平滑面では、エナメル質の実質欠損は認められないが、脱灰を疑うような白濁や褐色斑等が認められるもの、(3)そのほか、例えば、隣接面や修復物下部の着色変化、(1)、(2)の状態が多数に認められる場合等、地域の歯科医療機関との連携が必要な場合が該当する。この場合は学校歯科医所見欄にCO要相談と記載する。
6 「歯の状態」の欄歯式の欄に記入された当該事項について、上下左右の歯数を集計した数を該当欄に記入する。
7 「その他の疾病及び異常」の欄病名及び異常名を記入する。
8 「学校歯科医」の欄規則第9条の規定によって、学校においてとるべき事後措置に関連して学校歯科医が必要と認める所見を記入押印し、押印した月日を記入する。保健調査の結果と視診触診の結果から必要とみられる事項や要観察歯がある場合には、歯式欄に加えこの欄にもCO、CO要相談と記入する。また、歯垢しこうと歯肉の状態を総合的に判断して、歯周疾患要観察者の場合はGO、歯科医による診断と治療が必要な場合はGと記入する。歯周疾患要観察者GOとは、歯垢がしこうあり、歯肉に軽度の炎症症候が認められているが、歯石沈着は認められず、注意深いブラッシング等を行うことによって炎症症候が消退するような歯肉の保有者をいう。
9 「事後措置」の欄規則第9条の規定によって学校においてとるべき事後措置を具体的に記入する。
別紙
児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について
学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第13条第1項及び同法第15条第1項の健康診断の方法及び技術的基準については、同法第17条第1項の規定に基づき学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)に定められたもの以外は、この「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について」により実施するものとする。
1 総括事項
健康診断に当たっては、その正確を期すため、あらかじめ測定用具や機器類を点検 し、その精度が保たれるように注意すること。
8 歯及び口腔の検査(規則第3条第9号関係)
歯及び口腔の検査に当たっては、下記に留意して実施すること。
(2)歯の検査は下記に留意して実施すること。
ア 歯の疾病及び異常の有無の検査は、処置及び指導を要する者の選定に重点を置くこと。
イ 咬合の状態、歯の沈着物、歯周疾患、過剰歯、エナメル質形成不全などの疾病及び異常については、特に処置又は矯正を要する程度のものを具体的に所定欄に記入すること。
ウ 補てつを要する欠如歯、処置を要する不適当な義歯などのあるときは、その旨「学校歯科医所見」欄に記入すること。
エ はん状歯のある者が多数発見された場合には、その者の家庭における飲料水についても注意すること。
(3)その他、顎顔面全体のバランスを観察し、咬合の状態、開口障害、顎関節雑音、疼痛の有無、発音障害等についても注意すること。
○厚生労働省告示第三十七号
健康増進法(平成十四年法律第百三号)第九条第一項の規定に基づき、健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(平成十六年厚生労働省告示第二百四十二号)の一部を次の表のように改正したので、同条第三項の規定に基づき公表する。
令和二年二月十二日
○健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針
(平成十六年六月十四日)
(厚生労働省告示第二百四十二号)
健康増進法(平成十四年法律第百三号)第九条第一項の規定に基づき、健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針を次のように定めたので、同法第九条第三項の規定に基づき公表する。
健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針
第一 基本的な考え方
健康診査は、疾病を早期に発見し、早期治療につなげること、健康診査の結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導(運動指導等生活習慣の改善のための指導を含む。以下同じ。)等を行うことにより、疾病の発症及び重症化の予防並びに生涯にわたる健康の増進に向けた自主的な努力を促進する観点から実施するものである。
なお、健康診査は、大きく「健診」と「検診」に分けられる。健診は、必ずしも特定の疾患自体を確認するものではないが、健康づくりの観点から経時的に値を把握することが望ましい検査群であり、健診の結果、異常がないとしても行動変容につなげる狙いがある。検診は、主に特定の疾患自体を確認するための検査群であり、検診の結果、異常がなければ次の検診まで経過観察を行うことが多いものである。
1 制度間で健康診査における検査項目、検査方法等が異なる場合がある。
2 精度管理が適切に行われていないため、検査結果の比較が困難である。
3 健康診査の結果が、受診者に対する栄養指導その他の保健指導、必要な者に対する再検査、精密検査及び治療のための受診並びに健康の自己管理に必ずしもつながっていない。
4 健康診査の結果を踏まえた集団に対する健康課題の明確化及びそれに基づく栄養指導その他の保健指導が十分でない。
5 健康診査の結果等(栄養指導その他の保健指導の内容を含む。以下同じ。)が各健康増進事業実施者間で継続されず、有効に活用されていない。
6 健康診査の結果等に関する個人情報の保護について必ずしも十分でない。
また、このような状況の中、平成十七年四月に、メタボリックシンドロームの我が国における定義及び診断基準が日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会及び日本内科学会から構成されるメタボリックシンドローム診断基準検討委員会において策定された。この定義及び診断基準においては、内臓脂肪の蓄積に着目し、健康診査の結果を踏まえた効果的な栄養指導その他の保健指導を行うことにより、過栄養により生じる複数の病態を効率良く予防し、心血管疾患等の発症予防につなげることが大きな目標とされた。平成二十年四月からは、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)により、保険者に対して内臓脂肪の蓄積に起因した生活習慣病に関する特定健康診査及び特定健康診査の結果による健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導の実施が義務付けられたところである。
また、健康診査の項目や保健指導対象者の基準等については、科学的根拠を踏まえて、定期的な見直しが必要である。
その他、健康診査の結果等を含む医療情報に関しては、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(平成二十九年法律第二十八号。以下「次世代医療基盤法」という。)が平成三十年五月から施行されている。
以上を踏まえ、この指針においては、各健康増進事業実施者により適切な健康増進事業が実施されるよう、健康診査の実施、健康診査の結果の通知、その結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導の実施等、健康手帳等による健康診査の結果等に関する情報の継続の在り方及び個人情報の取扱いについて、各制度に共通する基本的な事項を定めることとする。
各健康増進事業実施者は、健康診査の実施等に当たり、個人情報の保護等について最大限に配慮するとともに、以下に定める事項を基本的な方向として、国民の健康増進に向けた自主的な取組を進めるよう努めるものとする。
なお、この指針は、必要に応じ、適宜見直すものとする。
第二 健康診査の実施に関する事項
一 健康診査の在り方
1 健康増進事業実施者は、健康診査の対象者に対して、その目的、意義及び実施内容について十分な周知を図り、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた健康診査の実施等により対象者が自らの健康状態を把握し、もって生涯にわたる健康の増進に資するように努め、未受診者に対して受診を促すよう特に配慮すること。なお、健康診査については、次に掲げる要件を満たすべきものであることから、新たな健康診査の項目等の導入又は見直しに当たっては、これを考慮すること。
(一) 対象とする健康に関連する事象(以下「健康事象」という。)が公衆衛生上重要な課題であること。
(二) 対象とする健康事象の機序及び経過が理解されており、当該健康事象が発生する危険性が高い期間が存在し、検出可能な危険因子及びその指標が存在すること。
(三) 対象とする健康事象又は検出可能な危険因子に対して適切な検査及び診断法が存在し、かつ、科学的知見に基づいた効果的な治療及び介入を早期に実施することにより、より良好な予後をもたらすことを示す科学的根拠があること。
(四) 対象となる健康事象について原則として無症状であること。
(五) 検査の目的と対象集団が明確であり、社会的に妥当な検査であること。
(六) 検査が簡便かつ安全であり、精度及び有効性が明らかで、適切な基準値が設定されていること。
(七) 検査を実施可能な体制が整備されていること。
(八) 事後措置(健康診査の結果等を踏まえた精密検査、保健指導等をいう。以下同じ。)の対象者の選定及び当該措置の実施方法の設定が科学的根拠に基づきなされていること。
(九) 事後措置を実施可能な保健医療体制が整備されていること。
(十) 健診及び検診に関するプログラム(以下「健診・検診プログラム」という。)は、教育、検査診断及び事後措置を包括し、臨床的、社会的及び倫理的に許容されるものであること。
(十一) 健診・検診プログラムは、危険性を最小限にするための質の保証がなされており、起こり得る身体的及び精神的不利益を上回る利益があること。
(十二) 健診・検診プログラムの適切な運用(モニタリング、精度管理等を含む。)を実施する体制が整備されていること。
(十三) 健診・検診プログラムの公平性及びアクセスが対象集団全員に対して保証されていること。
(十四) 健診・検診プログラムを継続して実施可能な人材及び組織体制が確保されていること。
(十五) 健診・検診プログラムの対象者に対し、検査結果及び事後措置に関する科学的根拠に基づく情報が提供され、当該情報を得た上での自己選択及び自律性への配慮がなされていること。
(十六) 健診・検診プログラムを実施することによる死亡率又は有病率の減少効果に関して質の高い科学的根拠があること。
(十七) 健診・検診プログラムに要する費用が社会的に妥当であること。
(十八) 健診・検診プログラムに関し、実施頻度、検査感度等に影響を与える検査手法の変更をする場合には、科学的根拠に基づく決定を行うこと。
2 健康増進事業実施者は、生涯にわたる健康の増進の観点等から、健康診査の実施について、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた健康課題に対して配慮しつつ、他の制度で健康診査が実施された場合の対応等、各制度間及び制度内の整合性を取るために必要な相互の連携を図ること。
3 健康増進事業実施者は、関係法令を踏まえ、健康診査における検査項目及び検査方法に関し、科学的知見の蓄積等を踏まえて、必要な見直しを行うこと。
4 健康増進事業実施者は、各制度の目的を踏まえつつ、健康診査における検査項目及び検査方法を設定又は見直す場合、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた健康課題に対して配慮するとともに、科学的知見の蓄積等を踏まえて、疾病の予防及び発見に係る有効性等について検討すること。
5 健康増進事業実施者は、健康診査の検査項目について受診者にあらかじめ周知するとともに、法令上の実施義務が課されている検査項目を除き、受診者が希望しない検査項目がある場合、その意思を尊重すること。また、法令上の実施義務が課されている検査項目を除き、特に個人情報の保護等について最大限に配慮することが望ましい検査項目があるときには、あらかじめ当該検査項目の実施等につき受診者の同意を得ること。
二 健康診査の精度管理
1 健康増進事業実施者は、健康診査の精度管理(健康診査の精度を適正に保つことをいう。以下同じ。)が生涯にわたる個人の健康管理の基盤として重要であることにかんがみ、健康診査における検査結果の正確性を確保するとともに、検査を実施する者や精度管理を実施する者が異なる場合においても、受診者が検査結果を正確に比較できるようにすること。また、必要のない再検査及び精密検査を減らす等必要な措置を講じることにより健康診査の質の向上を図ること。
2 健康増進事業実施者は、健康診査を実施する際には、この指針に定める内部精度管理(健康診査を行う者が自身で行う精度管理をいう。以下同じ。)及び外部精度管理(健康診査を行う者以外の者が行う精度管理をいう。以下同じ。)を適切に実施するよう努めること。また、当該精度管理の実施状況を当該健康増進事業の対象者に周知するよう努めること。
3 健康増進事業実施者は、健康診査の実施に関する内部精度管理として、標準物質が存在する健診項目については当該健診項目に係る標準物質を用いるとともに、次に掲げる事項を考慮した規程を作成する等適切な措置を講じるよう努めること。
(一) 健康診査の実施の管理者の配置等管理体制に関する事項
(二) 健康診査の実施の手順に関する事項
(三) 健康診査の安全性の確保に関する事項
(四) 検査方法、検査結果の基準値、判定基準等検査結果の取扱いに関する事項
(五) 検体の採取条件、検体の保存条件、検体の提出条件等検査の実施に関する事項
(六) 検査用機械器具、試薬、標準物質等の管理について記録すること及びその記録を保存することに関する事項
(七) 検査結果の保存及び管理に関する事項
4 健康増進事業実施者は、検査値の精度等が保証されたものとなるよう健康診査に関する外部精度管理として、全国規模で実施される外部精度管理調査を定期的に受けること、複数の異なる外部精度管理調査を受けること等により、自ら実施する健康診査について必要な外部精度管理の実施に努めること。
5 健康増進事業実施者は、健康診査の実施の全部又は一部を委託する場合は、委託先に対して前二号に規定する内部精度管理及び外部精度管理を適切に実施するよう要請するとともに、当該内部精度管理及び外部精度管理を適切に実施しているか並びに医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第九条の七に定める検査業務の精度の確保に係る基準に適合しているかについての報告を求める等健康診査の実施につき委託先に対して適切な管理を行うこと。また、委託先が検体検査の業務を衛生検査所等に再委託する場合には、同令第九条の八に定める受託業務及び臨床検査技師等に関する法律施行規則(昭和三十三年厚生省令第二十四号)第十一条に定める衛生検査所の検査業務の精度の確保に係る基準に適合する者に再委託しなければならないことを踏まえ、健康増進事業実施者が委託先に適切な措置を講じさせること。なお、この場合に委託先は、再委託先の行為について責任を負うこと。
6 健康増進事業実施者は、研修の実施等により健康診査を実施する者の知識及び技能の向上を図るよう努めること。
第三 健康診査の結果の通知及び結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導に関する事項
1 健康増進事業実施者は、健康診査の実施後できる限り速やかに受診者に健康診査の結果を通知すること。
2 健康増進事業実施者は、健康診査の結果を本人に通知することにとどまらず、その結果に基づき、必要な者には、再検査、精密検査及び治療のための受診の勧奨を行うとともに、疾病の発症及び重症化の予防又は生活習慣の改善のために栄養指導その他の保健指導を実施すること。栄養指導その他の保健指導の内容には、食生活、運動、休養、飲酒、喫煙、歯の健康の保持その他の生活習慣の改善を含む健康増進に関する事項、疾病を理解するための情報の提供を含むこと。
3 健康増進事業実施者は、栄養指導その他の保健指導の実施に当たっては、健康診査の結果(過去のものを含む)、健康診査の受診者の発育・発達の状況、生活状況、就労状況、生活習慣等を十分に把握し、生活習慣の改善に向けての行動変容の方法を本人が選択できるよう配慮するとともに、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた内容とすること。例えば、壮年期においては、内臓脂肪の蓄積を共通の要因として、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧の状態が重複した場合に、心血管疾患等の発症可能性が高まることから、これらの発症及び重症化の予防の効果を高めるため、栄養指導その他の保健指導は、健康診査の結果から対象者本人が身体状況を理解し、生活習慣の改善の必要性を認識し、行動目標を自らが設定し実行できるよう、個人の行動変容を促すものとすること。また、栄養指導その他の保健指導は、個人又は集団を対象として行う方法があり、それぞれの特性を踏まえ、適切に組み合わせて実施すること。個人に対して、栄養指導その他の保健指導を行う際は、その内容の記録を本人へ提供するよう努めること。また、健康診査の受診者の勤務形態に配慮した上で栄養指導その他の保健指導の時間を確保する等栄養指導その他の保健指導を受けやすい環境づくりに配慮すること。
4 健康増進事業実施者は、健康診査の結果を通知する際に適切な栄養指導その他の保健指導ができるように、その実施体制の整備を図ること。さらに受診者の求めに応じ、検査項目に関する情報、健康診査の結果、専門的知識に基づく助言その他の健康の増進に向けて必要な情報について提供又は受診者の相談に応じることができるように必要な措置を講じること。
5 健康増進事業実施者は、栄養指導その他の保健指導に従事する者に対する研修の実施、栄養指導その他の保健指導の評価に努めること等により栄養指導その他の保健指導の質の向上を図ること。
6 健康増進事業実施者は、栄養指導その他の保健指導の実施の全部又は一部を委託する場合は、委託先が栄養指導その他の保健指導を適切に行っているかについて、報告を求める等委託先に対して適切な管理を行うこと。
7 地方公共団体、健康増進事業実施者、医療機関その他の関係者は、健康診査の結果の通知等の実施に関し、健康づくり対策、介護予防及び産業保健等の各分野における対策並びに医療保険の保険者が実施する対策を講じるために、相互の連携(以下「地域・職域の連携」という。)を図ること。
地域・職域の連携の推進に当たり、健康診査の結果等に関する情報(以下「健診結果等情報」という。)の継続、栄養指導その他の保健指導の実施の委託先に関する情報の共有など健康診査の実施、栄養指導その他の保健指導の実施等に係る資源の有効活用、自助努力では充実した健康増進事業の提供が困難な健康増進事業実施者への支援等の観点から有益であるため、関係機関等から構成される協議会等を設置すること。この場合、広域的な観点で地域・職域の連携を推進するため都道府県単位で関係機関等から構成される協議会等を設置するとともに、より地域の特性を生かす観点から、地域単位(保健所の所管区域等)においても関係機関等から構成される協議会等を設置するよう努めること。なお、関係機関等から構成される協議会等が既に設置されている場合は、その活用を行うこと。
協議会等の事業については、参考として次に掲げるものが考えられる。
(一) 都道府県単位
イ 情報の交換及び分析
ロ 都道府県における健康課題の明確化
ハ 各種事業の共同実施及び連携
ニ 研修会の共同実施
ホ 各種施設等の相互活用
ヘ その他保健事業の推進に必要な事項
(二) 地域単位
イ 情報の交換及び分析
ロ 地域における健康課題の明確化
ハ 保健事業の共同実施及び相互活用
ニ 健康教育等への講師派遣
ホ 個別の事例での連携
ヘ その他保健事業の推進に必要な事項
なお、協議会等の開催に当たっては、「地域・職域連携推進ガイドライン」(令和元年九月これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会取りまとめ)を活用すること。
8 健康増進事業実施者は、事前及び事後措置も含めた健診・検診プログラム全体としての評価を行うことが望ましい。また、評価を行う場合には、各々の健診及び検診事業に応じ、ストラクチャー評価(実施するための仕組みや実施体制の評価)、プロセス評価(目的の達成に向けた過程の評価)、アウトプット評価(目的達成のために行われる事業の結果の評価)及びアウトカム評価(目的の達成状況の評価)に分類の上、行うことが必要である。
第四 健康診査の結果等に関する情報の継続の在り方に関する事項
1 健康増進事業実施者においては、健診結果等情報を継続させていくことが受診者の健康の自己管理に役立ち、疾病の発症及び重症化の予防の観点から重要であり、生涯にわたる健康の増進に重要な役割を果たすことを認識し、健康増進事業の実施に当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)、地方公共団体において個人情報の保護に関する法律第十二条第一項の趣旨を踏まえて制定される条例等(以下「個人情報保護法令」という。)を遵守しつつ、生涯を通じた継続的な自己の健康管理の観点から、健診結果等情報を継続させるために必要な措置を講じることが望ましいこと。健康診査等の結果の写しの提供が予定されている場合には、原則として、各健診及び検診において、その結果等を、別途定める標準的な電磁的記録の形式により提供するよう努めること、又は、健康診査の実施の全部又は一部を委託する場合には、原則として、委託先に対して、当該形式による健康診査の結果等の提出を要請するよう努めること。
2 生涯にわたり継続されていくことが望ましい健診結果等情報は、健康診査の結果、栄養指導その他の保健指導の内容、既往歴(アレルギー歴を含む。)、主要な服薬歴、予防接種の種類、接種時期等の記録、輸血歴等であること。なお、生涯を通じた継続的な自己の健康管理の観点から、できる限り長期間、本人等が健診結果等情報を参照できるようにすることが望ましいこと。
3 健診結果等情報の継続は、電磁的な健康手帳等を活用することにより、健康の自己管理の観点から本人が主体となって行うことを原則とすること。この場合、統一された生涯にわたる健康手帳の交付等により、健診結果等情報を継続することが望まれる。一方、各制度の下で交付されている既存の健康手帳等はその目的、記載項目等が異なり、また、健康手帳等に本人以外の個人情報が含まれる場合等があるなど、既存の健康手帳等を統一し生涯にわたる健康手帳等とする場合に留意しなければならない事項があることから、まずは健康増進事業実施者が各制度の下において既に交付し又は今後交付する健康手帳等を活用することにより、健診結果等情報の継続を図っていくこととすること。
4 生涯にわたり健診結果等情報を継続させるための健康手帳等は、ライフステージ及び性差に応じた健康課題に対して配慮しつつ、その内容として、健康診査の結果の記録に係る項目、生活習慣に関する記録に係る項目、健康の増進に向けた自主的な取組に係る項目、受診した医療機関等の記録に係る項目、健康の増進に向けて必要な情報及び知識に係る項目等が含まれることが望ましいこと。また、その様式等としては、記載が容易であること、保管性及び携帯性に優れていること等について工夫されたものであり、将来的には電磁的な様式に統一されることが強く望まれること。
5 健康増進事業実施者は、健診結果等情報の継続のため、次に掲げる事項を実施するよう努めること。
(一) 健診結果等情報を継続して健康管理に役立たせていくように本人に働きかけること。
(二) 職場、住所等を異動する際において、本人が希望する場合には、異動元の健康増進事業実施者が一定期間保存及び管理している健康診査の結果を本人に提供するとともに異動先の健康増進事業実施者に同情報を提供するように本人に対し勧奨し、又は、個人情報保護法令により必要な場合には本人の同意を得た上で、異動先の健康増進事業実施者に健診結果等情報を直接提供する等健診結果等情報を継続するために必要な工夫を図ること。
(三) 健康診査の実施の全部又は一部を委託する場合においては、当該委託契約の中で、委託先である健康診査の実施機関が健康診査の結果を有している場合には、健康診査の受診者本人の請求に基づき、健康診査の実施機関から直接開示を行うことが可能となることを明記する等必要な工夫を図ること。
6 健康増進事業実施者は、次世代医療基盤法に基づく次世代医療基盤法第九条第一項に定める認定匿名加工医療情報作成事業者に対する健診結果等情報の提供について、任意ではあるが、自らの医療情報の提供が、匿名加工医療情報の利活用による医療分野の研究開発の促進を通じ、国民に提供される医療の進歩に資することを踏まえ、協力を検討すること。
第五 健康診査の結果等に関する個人情報の取扱いに関する事項
1 健康増進事業実施者は、健康診査の結果等に関する個人情報について適正な取扱いの厳格な実施を確保することが必要であることを認識し、個人情報保護法令を遵守すること。
2 健康増進事業実施者は、その取り扱う個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置として、守秘義務規程の整備、個人情報の保護及び管理を行う責任者の設置、従業者への教育研修の実施、苦情受付窓口の設置、不正な情報入手の防止等の措置を講じるよう努めること。
3 健康増進事業実施者は、個人情報の取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人情報の安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督として、委託契約の内容に記載する等により、委託を受けた者に前号に規定する措置を講じさせること。
4 健康増進事業実施者は、前号までに掲げた内容を含む個人情報の取扱いに係る方針を策定、公表及び実施し、必要に応じ見直し及び改善を行っていくよう努めること。
5 健康増進事業実施者が、個人情報保護法令に従いその取扱う個人情報を公衆衛生の向上を目的として行う疫学研究のために研究者等に提供する場合、あらかじめ当該研究者等に対して、関係する指針を遵守する等適切な対応をすることを確認すること。
第六 施行期日
この指針は、健康増進法第九条の施行の日から施行するものとする。
(施行の日=平成一六年八月一日)
改正文 (平成一九年一〇月二九日厚生労働省告示第三四九号) 抄
平成二十年四月一日から適用する。
改正文 (令和四年三月二五日厚生労働省告示第九二号) 抄
令和四年四月一日から適用する。
WHO: ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
すべての人々が基礎的な保健医療サービスを,必要なときに,負担可能な費用で享受できる状態
・ 健康は人権であるという視点.生存権 健康権 生命権 幸福追求権
・ すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること.
・ 過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること.
・ 常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること.
→ 歯列不正と健康: well-being(身体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態)
https://www.unicef.or.jp/kodomo/kenri/1_17j24j.htm
第24条
1. 締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。
2. 締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。
a. 幼児及び児童の死亡率を低下させること。
b. 基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供することを確保すること。
c. 環境汚染の危険を考慮に入れて、基礎的な保健の枠組みの範囲内で行われることを含めて、特に容易に利用可能な技術の適用により並びに十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水の供給を通じて、疾病及び栄養不良と戦うこと。
d. 母親のための産前産後の適当な保健を確保すること。
e. 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。
f. 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。
3. 締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。
4. 締約国は、この条において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、国際協力を促進し及び奨励することを約束する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
子どもの権利条約 (日本ユニセフ協会抄訳)
https://www.unicef.or.jp/kodomo/kenri/syouyaku.html
第24条
健康・医療への権利
子どもは、健康でいられ、必要な医療や保健サービスを受ける権利をもっています。